ヴァレリア セルヴァンスキーピアノ特別公開講座

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IMG_0003先週、勤め先の教室の講師を対象にした特別講座がありました。

リスト音楽院で学ばれ、日本、ハンガリー、イギリスで音楽教育活動を行っていらっしゃるセルヴァンスキー先生は、ほっそりとした女性の先生でした。

ピアノの先生ですが、とても勉強になるお話を聞くことができました。

子どもたちに音楽を教えるとき、まずどんな音楽を求めるのかを考えさせることが大切であるということがお話の中心だったと理解しました。

音楽は音と音の間に生まれる、つまり、音から音へとどう動くかを考えさせなければならないということでした。そのためにはまず、先生の演奏やCDなどで良い音楽を聴かせ、それがなぜ美しいのかを話すのだそうです。そのようにして、まず聴く力を付けさせ、徐々にフレーズや音楽のまとまりを自分で考えられるように導いていくそうです。

聴く力には、内的聴力(心の中にある音楽を聴く力)、出ている音を聴く力、批判する力(良かったか悪かったかを判断する力)の3種類が必要であり、それらによって自分が何をしたいのかを想像できていなければならないとおっしゃっていました。聴く力と同時に考える力も必要で、教える側の音楽を埋め付けるのではなくて、子ども自身の気持ちや考えを引き出すことが大事だそうです。例え5歳の子どもでも、考えることに意識を向ければ、考えるようになるとおっしゃっていました。

教える時に、この曲はどんな風に感じる?とか、どうして好きなの?と聞くようにはしていますが、なかなか答えが返ってこなくて、時間もないし、気詰まりな時間が流れるので、あきらめて、こうじゃないかな?とかこうだよ、と答えを言ってしまうことがあります。忍耐強く、あきらめずに、待たなければいけないのですね。考えることを中断してはいけないのですね。反省しました。なかなか自分の考えを言えなかったり、言えたとしても、明るいとか暗いとか、限られた言葉しか出てこないのは、子ども自身が自分の心の中を聴く習慣が出来ていないからだったのかもしれないと知らされました。

先生は音楽教師は庭師のような仕事だとおっしゃいました。正しく手を加えれば、美味しい実が成る。その答えが出るのは植物の生長と同じで何年も先のことだけど、常によく見ていないと、実がならない結果になってしまうと。本当に教えることは地味な仕事だし、なかなか結果は出ないし、思うようにはいかないしで、我慢と忍耐の仕事だと感じます。でも、楽しいことも多いし、教えられることも多いし、やりがいも感じます。先生のように、情熱を持って生徒さんたちと向き合い続けたいと思います。

ザハール ブロン 公開レッスン

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IMG_144912月の一週目、ザハール ブロンの公開レッスンが行われていました。

名教師として知られている先生のレッスンを生で見られること、受講生たちが将来有望な可能性をたくさん秘めた若者たちであること、など興味がわいたので、二日間聴講してきました。

受講生の方たちは、いろいろなコンクールで上位に名前を連ねる方々で、さすがに上手です。きっと何度か本番を重ねて、自分なりに消化している曲を持って来ているのでしょう。立派に自信を持って弾いています。そこに先生はもっとよくなるように、細かく丁寧に指導をしていきます。時にはものすごい至近距離で左手を観察し、ちょっとしたクセを指摘したり、ヴィブラートのスピードを指示したり。反対に遠くから眺めて、姿勢を直したり、フィンガリングを提案したり、曲全体の流れを整えたり。受講生たちは優秀なので、どんどん変わっていきます。1レッスンはたったの40分なのですが、音がどんどん変化していきました。

印象に残ったことは、コンチェルトであっても、オーケストラパートをよく勉強して、ハーモニーやリズムを融合させるように指導していたことです。ソリストの立場であっても、アンサンブルすることは忘れてはいけないということでしょうか。ヴァイオリンは、ひとりで練習し、ひとりで発表会などで弾くことがほとんどなので、小さい頃からピアニストに合わせてもらうことが当たり前になってしまいます。素晴らしいピアニストであればあるほど、どんなにわがままな演奏であっても合わせてくださるので、それで良しとしてしまいます。でも、本来はアンサンブル楽器であり、他の楽器と融合出来る方が良いのです。若いうちにそのことを知ることは、大事なことなのですね。

偉大な指導者と高い能力を備えた若者の、刺激溢れる時間でした。

カール ライスターを聴く

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IMG_2363昨日、大手町の日経ホールでカール ライスターの演奏を聴きました。ベルリンフィルで長い間ソロクラリネット奏者として活躍された、世界を代表する巨匠です。

74歳の巨匠と、28歳の佐藤卓史さんとおっしゃる若いピアニストの競演で4曲(メンデルスゾーン/クラリネットソナタ、シューマン/幻想小曲集、ダンツィ/クラリネットソナタ、ブラームス/クラリネットソナタ第2番)、佐藤さんのピアノソロで3曲(シューベルト/即興曲、リスト/愛の夢、シューマン/献呈)、というプログラムでした。すべてドイツロマン派の作曲家による作品です。

最初のメンデルスゾーンのソナタが始まった途端に、頭の中に木漏れ日の暖かい森の風景が浮かび始めてしまい、それからはずっとビルの建ち並ぶ大手町ではなくて、どこかの自然の中でくつろいでいるような時間を過ごしました。

ライスターさんの音と音楽は、とても心地の良い、当たり前にある風景の中で、当たり前の日常が営まれているような感じがしました。どの曲も温かく、熱いのだけど力んでいない、自然な時の流れにたゆたうような感じです。

また、楽器の吹き口に被せるキャップを取ったり付けたりする動作、管の中を掃除する動作、そして音楽、すべてが音や楽器や音楽に敬意をはらうような所作になっているのを見て、一時が万事なのだな、と我が事を深く反省しました。

ピアニストの佐藤さんの演奏は初めて聴きましたが、ドラえもんのようなまぁるい風貌からは予想できなかった、繊細で優しい音のピアニストでした。どんなに熱くなっても、とがった音ではなくて、響きのある丸い音でした。ピアニストが熱くなりすぎてしまうことが多いブラームスを、あれだけ繊細にクラリネットに寄り添えるなんて、余程の技術と心のコントロールが出来る人なのでしょう。どの曲でも、とにかくp(小さい音)が美しかったです。ソロもアンサンブルもできるピアニストは貴重ですから、これから世界中で引っ張りだこになるのではないでしょうか。

アンコールで、シューベルトのアヴェマリアを吹いてくれました。演奏の前に「福島のみんなのために演奏します。」と日本語でお話してくださり、涙を流していらっしゃいました。有り難くて、わたしも涙が出てしまいました。心に染みる演奏で、また涙が出ました。吹き終わった後、しばらく立ち上がらなかったのは、お祈りをしてくださっていたのでしょうか。。。日本のために、世界の巨匠が想いを込めて演奏してくださったことを忘れることはありません。ありがとうございます。

人は、年と共に体は老いていくけれど、精神は成長を続ける、と聞いた事があります。音楽でなくても、それぞれがそれぞれの人生の中で、揺るぎない自信に裏付けられた平安を得ることを目指して暮らしていったら、世界がより良く変わるのかもしれないな、なんて思いました。わたしも自分に持たされた、ささやかなささやかな能力を使って、大事に大事に仕事をして、音楽をして、心の豊かな老人になりたいと思いました。

レクチャーコンサート〜マリンバ〜

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IMG_00069月にパスキエのレクチャーコンサートを聴いて、演奏だけではなく、演奏者の生のお話を聴ける楽しさを味わったので、同じシリーズの安倍圭子さんのマリンバのレクチャーコンサートに行ってきました。

恥ずかしながら、マリンバについてほとんど何も知らなかったので、すべてが新鮮でした。

1956年、キリスト教普及のためにアメリカから来ていた宣教団が日本に楽器を持ち込んだのだそうです。

演奏者の安倍圭子さんは、教会で聴いたマリンバの音色に魅了され、1962年から演奏活動を始めたそうです。この日の会場でもあった東京文化会館の歴史と同じなのだそうです。

安倍さんがマリンバを始めた当初は、マリンバ独自の作品が無く、ヴァイオリンやフルートの曲をアレンジして、ピアノの伴奏で演奏することが多かったそうです。なぜ、マリンバのための曲が無いのだろう?と疑問に思い、あって然るべきと考えた安倍さんが、いろいろな作曲家に依頼して、また、作曲家に支払う予算を獲得するために、あちらこちらの企業に働きかけて、ようやく、オリジナルの作品が誕生したそうです。コンサートの前半は、そんな苦労の末に出来た曲を中心に聴きました。当時は新作でしたが、今では世界中のコンクールの課題曲となっている程普及している曲だそうです。(安倍 圭子:古代からの手紙、三善 晃:トルスⅢより「テーゼ」、田中 利光:マリンバのための二章より 第1楽章、末吉 保雄:ミラージュ〜マリンバのための〜、三木 稔:マリンバ スピリチュアル)

後半は安倍さんの創った曲を聴きました。(道Ⅱ、祭りの太鼓、風紋Ⅱ、わらべ歌リフレクションズⅢ〜2台のマリンバと二人の打楽器奏者のための〜)

全身で風景や心象を表現する演奏は、エネルギッシュで、ダンスを見ているかのようです。マレット(バチ)の素材によって、出てくる音色が全く違うのがおもしろく、時には足に鈴を付け、手首にはマラカスのような打楽器をつけて表現する姿にビックリしました。

桐朋学園大学の打楽器科の教授と学生さんとの共演も多かったのですが、安倍さんを中心に一体となっていて見事でした。

先生として、世界中を教えて回ってもいらっしゃるそうです。学生さんに教える方法のひとつとして、面白い方法を披露してくださいました。ヨーロッパの先生方はあまり取らない方法だそうですが、安倍さんは、学生さんに少し音楽が足らないな、とか、世界観が違うな、と感じると、その学生さんと一緒に演奏をするのだそうです。全く同じ音を演奏するだけではなくて、即興で音楽をリードしていくのがコツのようです。特に日本人の作曲した曲を演奏するわけですから、日本特有のお家芸の要素はヨーロッパの学生さんには特に理解が難しいのかもしれませんから、そうやって伝えていただけたらよく理解できるのだと思います。その方法で伝えると、日本の学生さんでもヨーロッパの学生さんでも、自然と音楽が広がって、表現が大きくなるのだそうです。

それから、こんなこともおっしゃっていました。初めてヨーロッパに行った時に、不動の様相で立ちはだかる石の文化の前に、紙と木の朽ちる文化の中で暮らしてきた日本人である自分がどうしたらよいのか、わからなかったそうです。でも、日本人としての原風景と、その中で過ごした満ち足りた子ども時代が自分を支えてくれて、海外でも共感を呼ぶ演奏をすることに繋がっているのだそうです。

マリンバは日本から発信される要素が多いようですが、一般にクラシック音楽というとヨーロッパのお家芸です。ですから、ヨーロッパの文化や風習や音楽のルールを学ばなければなりませんが、日本人としての遺伝子に誇りをもってうまく融合させていくというのは素晴らしいことだな、と感じました。マリンバという楽器と、安倍圭子さんという素晴らしい音楽家を通して、自由で解放された音楽の世界を堪能することができました。一流の人から放たれるエネルギーが会場に充満していて、そのパワーに触れることができて幸せな晩でした。アンコールで演奏されたドナドナのメロディーの変奏曲(曲名がわかりません)が心に染みました。

このシリーズの次回は1月9日。若手ピアニストの小菅 優さんの演奏とお話を聴く予定です。

明日は立冬

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DSC_0717過ごしやすい暖かな秋の毎日が続いていますね。でも、明日8日は立冬です。いよいよ本格的な冬がやってきますね。

先月の終わりに、久しぶりに映画を観ました。ぽっかり空いた時間にふらりと映画館に行き、始まる時間がちょうどよかったのが『ツレがうつになりまして。』という映画でした。

結婚5年目の夫婦が主人公です。几帳面なご主人が鬱病になって、会社を辞めて、夫婦が力を合わせて、周りの人に助けてもらいながら病気とつきあっていくというストーリーです。

夫婦について、あらためて考えてしまいました。。。わたしたちは結婚して4年目なので、ちょうどこの映画の中の夫婦と同じくらいの時間を二人で過ごしています。さらに、夫はまじめできちんとした働き者で、妻は夫の元で好きな事を生業としているところも同じで、なんだかウチみたいだな〜、と親近感を持ってしまいました。

わたしは夫の仕事について詳しいことはあまり知りません。平日は毎日同じ時間に起きて出かけ、夜は遅くまで仕事をしています。疲れた顔で帰ってくる日もありますし、元気に帰ってくる日もあります。疲れた顔の日でも、帰って来てから仕事の愚痴をこぼすことはありません。大変なの?と聞くと、普通だよ〜、と答えます。

でも、この映画を観ていると、男の人が外で働く大変さがよくわかります。もちろん、好きなことを仕事にしているわたしにも大変なことは多くあります。でも、会社勤めと自由に仕事をするいうのは根本的に違うのですね。そんなこともこの映画を観て学習してしまいました。

この映画の中の夫は真面目すぎて、頑張りすぎて、病気になってしまいましたが、真面目に働く多くの人が、ウツという心の病と隣り合わせにいるのかもしれないですね。

うつになってしまった夫を支えて、漫画家の妻が頑張りだします。この奥さんの素晴らしいところは、辛い事もユーモアたっぷりに受け止めてしまうところです。本当にすごいなと思いました。

映画の中に、結婚式をした教会で、同じ時期に結婚したご夫婦と同窓会をする場面があります。ここはグッときました。宮崎あおいさん演じる妻が、結婚の時にした誓約「健やかな時も、病める時も、、、」という言葉を思い出して泣いてしまいます。でも、表情は明るくて、なんだかとっても良いのです。

わたしも結婚式で同じ誓約をしたことを思い出しました。どんな時でも一緒に歩んでいくうちに夫婦になっていくのだな、とあらためて知らされました。

誓約の箇所とは違いますが、こんな聖句があります。

愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。不義を喜ばず、真実を喜ぶ。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。

(コリントの信徒への手紙 一 13章より)

わたしたちも結婚する前に、牧師先生から結婚についてのお話をしていただきました。この、聖書の箇所の『愛』の部分に自分の名前を入れてみてください、と言われて、自分がどれだけ愛から遠い人間であるかを思い知りました。実践できたのはイエス様だけ。なかなかそんな風に生きられないのが人間ですが、目指していくのが大事なのですね。

冬が来ますが、心の温かい毎日を過ごしたいです。

聴く一週間

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IMG_2003最近、いろいろな演奏を聴く機会に恵まれています。どんな環境での演奏からも影響を受けるものなのだな、とあらためて感じています。

先週は、3つの良い体験をすることができました。

まず11 日に、クラシック音楽コンクールの本選の高校生と大学生の演奏を聴きに行きました。さすがは若い!!!パワフルな演奏ばかりでした。気持ちも強くて、どの人も全力で音楽と向き合っていることが伝わってきました。でも、本音を言えば、みんな力で弾きすぎている気がしました。上半身だけで力任せに演奏するスタイルが今の主流なのでしょうか?!少し将来が不安です。肩こりや首こりくらいで済めば良いですが、腱鞘炎や腰痛や生理痛などの大きな病気につながっていきそうな気配がします。小さい時から、重心を下げて弾くように指導したいな、と思いました。

12日の昼間、栄区のスポーツセンターの地下にある、さんぽみちという喫茶店で毎週水曜日に栄ソリスティで活躍されていらっしゃる、伊藤さんのピアノの演奏を聴かせていただきました。ショパンのノクターンを5曲。伊藤さんの演奏はいつ聴いても大好きです。人生を長く歩んでこられたからこその、深くて愛情に満ちた優しい音色と、ショパンに対する想いとお話で、とても幸せな気持ちになりました。

13日の夜は、母校武蔵野音楽大学のベートーヴェンホールで、イリヤ イーティンのリサイタルを聴きました。モスクワ音楽院出身のピアニストで、武蔵野音楽大学でも後進の指導をしていらっしゃる方です。バッハやメシアンの作品もとてもステキでしたが、ベートーヴェンのピアノソナタ32番op.110にとても感動しました。ベートーヴェンの後期のソナタは、音が多くて、なんとなくぐちゃぐちゃした印象が残りやすくて苦手だったのですが、この演奏を聴いていたら、とてもすっきりと音の対話が見えてきたのです。複雑だけど、整然とした音楽を聴かせていただいて、初めて後期のソナタの素晴らしさに触れられた気がしました。

後期試験と発表会が終わって、気持ちが解放されていた時に、新しい刺激を受けて、リフレッシュできた一週間でした。

発表会終了

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年に一度の発表会が無事に終了しました。

それぞれが一生懸命に取り組んだ音楽を、立派に発表できました。

今年もピアノと歌を勉強している皆さんと一緒に出演させていただきました。違う楽器の音を聴くことも大事な経験になります。

みんな緊張して、いつもとは違う環境で演奏することで、きっと成長できたことでしょう!

また、新しい気持ちで練習を始めて、来年の発表にむけて頑張りましょうね。

きゅりあん_4

音楽教室の前期試験終了!

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大型の台風15号が通り過ぎたら秋が来ました。もう半袖では肌寒く感じる毎日ですね。体調を崩しやすい時期なので、気をつけたいものです。

さわやかな秋の三連休の最中に、音楽教室の前期試験が行われました。

先生たちの前で、4月から頑張ってきた成果を発表します。このような試験があるのが音大の附属の教室ならではの特徴のひとつです。

まだ小さい4歳くらいの生徒さんでも、試験となるとちゃんと緊張感を持って臨んでいます。先生たちはニコニコして聴いていますが、試験なので拍手はありませんし、成績もつきます。そんな環境ですから、普段味わわないドキドキを体験することになっているようです。

でも、緊張するのは生徒さんだけではありません。先生も緊張します。自分が担当させていただいている生徒さんの演奏時間は、自分が演奏しているかのような時間です。「次のところ、この子は苦手なんだよな〜、無事に弾けますように、、、」「苦手な音程だけど、合っていたぞ!」「後少しだから止まらないでね〜」etc.ずっと気が抜けず、終わるとドッと疲れます。力を発揮できた人、出来なかった人、いろいろでしたが、この本番での演奏がひとりひとりの実力なので、わたしがまず丸ごと引き受けて、今後、どんな風に指導をするか作戦を立てていかなくてはいけません。生徒にくだされる評価はわたしの指導力に対する評価です。過不足なく受け止めて、創意工夫です。

今回、わたしの生徒さんは、幼稚園の年長さんから小学2年生までの小さな方しか試験を受けなかったので、後半は他の先生の生徒さんの演奏をじっくりと聴かせていただくことができました。(試験は年齢順)こういう機会を無駄にする手はありません。上手な生徒さんはどうしてうまく弾けるのかを観察し、指導されていらっしゃる先生が、どんな風に教えていらっしゃるのか考えます。逆のパターンからも学ぶことがたくさんあります。本当に有り難い経験となります。

生徒さんも親御さんも、厳しい環境の中でよく頑張ります。今回、受験や塾の都合で試験を受けられなかった生徒さんもいらっしゃいましたが、彼らも忙しい時間をやりくりして、ヴァイオリンを続けています。そして、みんな、純粋に上手くなりたい、と願っているのがわかります。だから、どの生徒さんも上手にしたいと思うのです。次は3月のコンサート形式の試験に向けて、わたしも気持ちを新たに勉強と研究です。

レジス パスキエ

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IMG_1439先週金曜日(16日)に東京文化会館小ホールで、レジス パスキエのレクチャーコンサートを聴きました。

プログラムは、フォーレ、ドビュッシー、ラベル、サン サーンスのヴァイオリンソナタでした。レクチャーコンサートなので、お話が間に入っています。

録音では何度も聴いていますが、生演奏は初めてなので、何日も前から楽しみにしていました。

フランスの至宝、と称えられているのは知っていましたが、本当に何から何まで素晴らしくて、なんと表現してよいかわかりません。

演奏は、すごく良かった!!としか書けません。なので、お話してくださったことについて書きます。

パスキエのお父さんは1902年の生まれだそうです。パリ高等音楽院の校長先生もされた音楽家だったそうです。それで、ドビュッシーとお知り合いだったり、その時代の名だたる音楽家がとても身近な存在だったそうです。パスキエはそんなお父さんから、音楽家たちのお話をたくさん聞いたそうです。

フォーレは、ラベルの先生でやはりパリ高等音楽院の校長先生をしていたそうです。フォーレの音楽がとても複雑なのは、フォーレが化学好きだった事と関係があるそうです。ベートーヴェンと同じように耳の病気にかかってしまい(同じ病気ではないそうですが)、だんだん耳が聴こえなくなっていったそうです。そのことがハーモニーのサイエンスに繋がっていったそうです。

ドビュッシーは、フランクの弟子だったそうです。パスキエのお父さんはドビュッシーの話をよくしたそうです。フォーレとは全く違い、情景を音にした音楽家であり、フランクから教わったことと全く違う方法で作曲したがったそうです。海が好きで、一日中ノルマンディーの海を見て過ごすこともあったそうです。その時代のクラシックな書法に反抗して、新しいスタイルを創ったところは、ロートレックと似ている、とおっしゃっていました。

ラベルは若い頃に体が弱かったために、音楽家として活躍した年数は短いのですが、世界中で最も知られている作曲家ではないですか?ボレロのおかげで。と笑わせてくれました。多くの文豪家と交流があって、ミステリアスで、オーケストレーションがうまくて、とにかくと〜ってもいい人だったそうです。このヴァイオリンソナタは、3楽章あるけれども、3つが全然違う内容になっているのが面白いとおっしゃっていました。1楽章は夢を見ているよう、2楽章はジャズ、3楽章はト長調のピアノコンチェルトにとてもよく似ていて、ほとんどピアノがメインでヴァイオリンはずっと細かい音を弾いている、のだそうです。

サン サーンスは、ベートヴェンが大好きで、それでマドレーヌ寺院のオルガニストになったそうです。書法はドビュッシーのように新しい方向を目指したのではなく、とても正統派。そして、様々な楽器のための曲を作っています。小さい頃は天才児と呼ばれたそうです。サンサーンスの晩年のエピソードです。子どもだったレジスさんが、とあるピアノが置いてあるカフェでお父さんといた時のこと。お客さんとして来ていた老人がおもむろにピアノを弾き始めたそうです。その人がサンサーンスだったそうです。サンサーンスは、評論家としても活躍したそうですが、好きな音楽家のことは応援したそうですが、嫌いな音楽家のことは平気で悪口を書いたそうです。

もしかしたら、記憶違いなところもあるかもしれませんが、こんなお話をしてくださいました。

パスキエの話し方は、声が優しくて、心がこもっていて、とても落ち着くリズムがありました。フランス語はわからないけど、きっと、人柄も音楽と同じように円熟した素晴らしい方なのだろうなと感じました。

ピアニストは池田珠代さんとおっしゃる、若い日本人の女性でした。パリで活躍されているそうで、通訳もしてくださっていました。繊細な感じで、出過ぎず乱さず、でも、しっかり主張してパスキエと対等に音楽していて、すごいなと思いました。

アンコールにはラベルのハバネラを弾いてくれました。おやすみなさいのかわりに弾きます、、、というステキなコメント付きでした。

パスキエの演奏会が、12/4に横浜市港南区の上大岡にある、ひまわりの郷というホールであるそうです。お近くにお住まいの方はぜひ、聴きに行ってみてください!!こんな大家の演奏を、近所で聴ける機会はそうそうないと思います。モーツァルト、シューマン、バルトーク、ラベルの曲を演奏されるようです。(問い合わせ 045-848-0800  ひまわりの郷)

教えられる

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IMG_1308教える仕事は、大学生のころに始めました。大学の先輩から引き継ぐかたちで、中学2年生の女の子を教えたのが最初でした。

それからずいぶん時間が経って、関わらせていただいた人数は相当な数になりました。

不思議なもので、教えていると、昔、自分が先生に言われたことをそのまま伝えていることがよくあります。さらに、伝えながら、その言葉の真意が解ることがあります。あぁ、こういうことだったんだ!と気がつくのです。

わたしはとても手のかかる生徒でしたので、先生にはたくさんのご苦労とご迷惑をおかけしてきました。でも、音楽をしたおかげで、不器用でどんくさい部分が相当活性化されました。

子どもの頃や、学生の時は思ったように弾けない自分に腹を立てて、周りの優秀な友だちと自分を比較してよく泣きました。辛くて辛くて、泣くしかなかったのですが、不思議とやめたいと思わなかったのは、先生と親のおかげだと感謝しています。

おもしろいもので、教える側になってみると、自分が優秀でなかったことが役にたっています。そして、自分も子どもに戻ってやり直しているような体験をすることがあります。

生徒さんの中にいろいろな課題を見つけると、一生懸命、どうやって解決しようかと考えます。これがわたしにとってもチャンスになります。これまたおもしろいもので、アイデアは楽器を持っている時ではなくて、歩いている時、電車の中、お料理をしている時など、音楽から離れている時に降ってきます。降ってきたアイデアをどうやって伝えようかと考えて太らせて、レッスンに持ち込みます。うまく伝われば大成功ですが、失敗する時もあります。失敗したらまた、考え直しです。生徒さんはみんなそれぞれですから、生徒さんの数だけ方法を考えます。これが結果としてわたしの勉強になっています。つまり、生徒さんから教えられているのですね。

生徒の立場の時も、先生の立場の時も学べるなんて幸せです。ありがとうございます。