リスト音楽院で学ばれ、日本、ハンガリー、イギリスで音楽教育活動を行っていらっしゃるセルヴァンスキー先生は、ほっそりとした女性の先生でした。
ピアノの先生ですが、とても勉強になるお話を聞くことができました。
子どもたちに音楽を教えるとき、まずどんな音楽を求めるのかを考えさせることが大切であるということがお話の中心だったと理解しました。
音楽は音と音の間に生まれる、つまり、音から音へとどう動くかを考えさせなければならないということでした。そのためにはまず、先生の演奏やCDなどで良い音楽を聴かせ、それがなぜ美しいのかを話すのだそうです。そのようにして、まず聴く力を付けさせ、徐々にフレーズや音楽のまとまりを自分で考えられるように導いていくそうです。
聴く力には、内的聴力(心の中にある音楽を聴く力)、出ている音を聴く力、批判する力(良かったか悪かったかを判断する力)の3種類が必要であり、それらによって自分が何をしたいのかを想像できていなければならないとおっしゃっていました。聴く力と同時に考える力も必要で、教える側の音楽を埋め付けるのではなくて、子ども自身の気持ちや考えを引き出すことが大事だそうです。例え5歳の子どもでも、考えることに意識を向ければ、考えるようになるとおっしゃっていました。
教える時に、この曲はどんな風に感じる?とか、どうして好きなの?と聞くようにはしていますが、なかなか答えが返ってこなくて、時間もないし、気詰まりな時間が流れるので、あきらめて、こうじゃないかな?とかこうだよ、と答えを言ってしまうことがあります。忍耐強く、あきらめずに、待たなければいけないのですね。考えることを中断してはいけないのですね。反省しました。なかなか自分の考えを言えなかったり、言えたとしても、明るいとか暗いとか、限られた言葉しか出てこないのは、子ども自身が自分の心の中を聴く習慣が出来ていないからだったのかもしれないと知らされました。
先生は音楽教師は庭師のような仕事だとおっしゃいました。正しく手を加えれば、美味しい実が成る。その答えが出るのは植物の生長と同じで何年も先のことだけど、常によく見ていないと、実がならない結果になってしまうと。本当に教えることは地味な仕事だし、なかなか結果は出ないし、思うようにはいかないしで、我慢と忍耐の仕事だと感じます。でも、楽しいことも多いし、教えられることも多いし、やりがいも感じます。先生のように、情熱を持って生徒さんたちと向き合い続けたいと思います。