教える仕事は、大学生のころに始めました。大学の先輩から引き継ぐかたちで、中学2年生の女の子を教えたのが最初でした。
それからずいぶん時間が経って、関わらせていただいた人数は相当な数になりました。
不思議なもので、教えていると、昔、自分が先生に言われたことをそのまま伝えていることがよくあります。さらに、伝えながら、その言葉の真意が解ることがあります。あぁ、こういうことだったんだ!と気がつくのです。
わたしはとても手のかかる生徒でしたので、先生にはたくさんのご苦労とご迷惑をおかけしてきました。でも、音楽をしたおかげで、不器用でどんくさい部分が相当活性化されました。
子どもの頃や、学生の時は思ったように弾けない自分に腹を立てて、周りの優秀な友だちと自分を比較してよく泣きました。辛くて辛くて、泣くしかなかったのですが、不思議とやめたいと思わなかったのは、先生と親のおかげだと感謝しています。
おもしろいもので、教える側になってみると、自分が優秀でなかったことが役にたっています。そして、自分も子どもに戻ってやり直しているような体験をすることがあります。
生徒さんの中にいろいろな課題を見つけると、一生懸命、どうやって解決しようかと考えます。これがわたしにとってもチャンスになります。これまたおもしろいもので、アイデアは楽器を持っている時ではなくて、歩いている時、電車の中、お料理をしている時など、音楽から離れている時に降ってきます。降ってきたアイデアをどうやって伝えようかと考えて太らせて、レッスンに持ち込みます。うまく伝われば大成功ですが、失敗する時もあります。失敗したらまた、考え直しです。生徒さんはみんなそれぞれですから、生徒さんの数だけ方法を考えます。これが結果としてわたしの勉強になっています。つまり、生徒さんから教えられているのですね。
生徒の立場の時も、先生の立場の時も学べるなんて幸せです。ありがとうございます。